秋明菊

身に覚えがない。

私は彼が夜勤の時は
家でテレビを見たり
お風呂に入ったりしていた。

でも彼は信じてくれなかった。

『嘘も休み休み言えよ!!』
彼の怒鳴り声は
私の心じゃなくて
心臓に響いた。

怒鳴り声は怖かった。

信じてくれない事が辛かった。

自然と涙が溢れてきた。
彼女なのに‥‥
全く信じてもらえなくて
悔しかった。
何度も信じてほしいって言った。
でも彼は信じてくれなかった。

『女の涙は信じない』

別に涙を流したから
信じてほしいんじゃない。

この時の涙は悔し涙だった。

それも信じてもらえなかった。

『お前にはスパイを付けてるから
行動なんて丸分かりなんだよ』

スパイなんて
ドラマや映画の世界だけに
あるものだと思ってた。

私にスパイ‥‥。

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