秋明菊

ある夜。
私はいつものように
夕飯の支度をしていた。

彼が帰ってくる時間に
出来上がるようにして
彼の帰りを待っていた。

いつもなら
『いま終わったよ』とか
『これから帰るね』って
メールが来るのに
この日は来なかった。

おかしいな‥‥。
何かあったのかな‥‥

心配した私は彼にメールを送った。
気分を悪くさせないように
自然な感じな文を考えて
たっぷり絵文字を使って
送信ボタンを押した。

返事を待ってる間
私は不安だった。

いろいろ勘ぐった。

いつもなら2〜3分で
返ってくるメールが
なかなか返ってこない。

頭が真っ白になりかけた時
彼の着信音が鳴った。

私は持っていた包丁から
手を離しケータイを見た。

床に落ちた包丁は無力。
落ちた包丁は私の視界に
入っていなかった。

震えながらメールを見ると
私が送ったメールとは
正反対のメールが表示されていた。

いま返ってるー

色のないメールに
淋しさが募った。

心配した私が
バカみたいに思えて
ケータイを軽く投げた。

落ちた包丁を拾い
彼の大好きなキュウリのサラダを
黙々と作った。

< 44 / 73 >

この作品をシェア

pagetop