秋明菊

『なんかメール冷たいよね』

帰ってきた彼に何気なく聞いた。
彼は
『そうか?』しか言わなかった。

口数も減った彼を
私は気にしていたけど
気にしてないフリをした。

きっと仕事で疲れてるんだ‥

そう思い聞かせて
自分の気持ちを
自分で強くおし殺した。


これが普通なんだよね。

私は食事の準備を済ませ
リビングに運んだ。

彼は帰ってくると
ごはんができるまでゲームに夢中。
この日も夢中になっていた。

でもゲームが
自分の思い通りにいかないと
物凄く機嫌が悪くなる。

私が、ごはんを運び終えて座ると
彼はゲームを消して
何も言わずに食べ始めた。

『いただきます』

私は彼に聞こえるように言った。

でも彼は言わなかった。

『今日ねっ面接行ったの!
それでねっ‥‥』

場の重い空気を払おうと
今日の出来事の話をした。

彼はテレビの方を向き
私を見なかった。

『聞いてる?』
『あー‥聞いてる』

彼は多分、聞いてない。
私に興味がないのかもしれない。

話す気を失い
黙々と食事を済ませた。

『そういえば面接どうだった?』

食後の一服をしていた彼。

私は呆れた。

やっぱり聞いてなかったんだ‥‥

でも、ここで私が
機嫌を悪くした態度をとれば
その数倍の機嫌の悪さを
返される。

それが嫌だった私は
笑顔で答えるしかなかった。

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