秋明菊

ある晩、
静かに寝息をたてていた
彼の隣で私は目を閉じた。

いつもならスグ寝れるのに
この日はなぜか
なかなか眠れなかった。


『大好きっ』
『絶対離さないからねっ』

目を閉じると
彼の笑顔と優しい言葉が
私の頭の中を巡った。

私に対しての笑顔‥‥

どれくらい見てないんだろう‥

嫌われたのかな‥
飽きられたのかな‥
もう幸せな日は来ないのかな‥

気が付くと閉じた瞼から
涙が流れて出ていた。

涙を止めようと努力したけど
なかなか簡単に止まらなかった。

グスッ‥‥グスッ‥‥

私の鼻をすする音が
静かな部屋に響いた。

彼は目を覚ましたのか
私をそっと抱き締めた。

暖かい彼の体温。
優しくて居心地がよくて
私が求めていたものが
一気に満たされた気分になった。

悲し涙は嬉し涙に変わった。

私は彼に寄り添って
溢れ出る涙を拭いた。


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