秋明菊

私は食事に手を抜かなかった。

と、いうより抜けなかった。

もし手抜きの料理を出したとして
彼の機嫌を損ねたとすると
家事とバイトの両立が
できないなら辞めろって
言われるような気がして
怖くて仕方なかったから。

バイトに行くと
素の自分が出せて
何でも話が出来る人がいる‥。

私は心の休め場所を見つけて
それを失いたくなかった。

だから
それだけは言われないように
精一杯の努力をした。


目の前で小さく光る希望を
自分の過ちで
消し去りたくなかった。


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