秋明菊

服装


彼はファッション雑誌が好きで
毎月何冊か買っていた。

その雑誌のモデルが着ている服が
派手なヒョウ柄のワイシャツでも
絨毯みたいな柄のストールでも
彼が気に入ると
オークションで安く購入して
外出する時は
常に雑誌のモデルのように
着飾っていた。

ファッションなんて
あまり興味が無かった私は
安い服を多く買って
適当に着る感じだった。

月の服代は各自1万5千円で
彼は常にオークション。
私は常に安い服屋へ
毎月、買いに行っていた。

『これ似合うよ』

彼は私に似合うと言って
服屋に入ると私よりも
熱心に店内を物色していた。

雑誌をよく読む彼は
私と違って流行に敏感で
組み合わせとかが上手かった。

『じゃあ買うね』

私は彼の選んだ服を買い
彼に釣り合うよう努力した。

『服が趣味だから』

彼はブランドで固められた服に
身を包みながら
決まり台詞のように言っていた。

私は別に
彼が何を着ようと‥
彼が好きな服を着て
それで笑顔でいてくれるなら
それで構わなかった。

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