秋明菊

『は?何アイツ』

少しでも彼を見る人がいると
彼はイライラしていた。

『きっとカッコいいって
思ってるから見てるんだよ』

私はイライラする彼を
なだめるつもりで
いつも言っていた。

寒い時期の彼は
ロンティーにフワフワな
ファーが付いた上着を羽織り
ジーパンには
これでもかって程の量の
チェーンを付けていた。

暖かい時期は
上着が、ないバージョン。

歩く度にチャラチャラと
音をたてるチェーンは
たまに邪魔じゃないかと
思うほどだった。

でも彼は
オシャレが大好き。

だから私は
一切口を出さなかった。


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