嘘恋
「だけど、そんなことないよ」

付け足した。

また、あの着信メロディー。

朋久は沙織の顔を見ると 困ったような笑い顔で 電話にでた。

「もしもし」

『なにしてるの…?』

「千葉の現場だよ。酒ご馳走になったから、今日はこのままとまるよ。日曜日帰る」

少し 話しをして 電話を切る。

「愛されてるね」

沙織は笑いながら言った。

「ほんとにそう思う?」

「多分」

「そっちは?」

沙織は 割と真剣にマツとのことを 振り返る。

「…わからない…」

「なんだそれ」

タバコを携帯灰皿に消して捨てると また 次のタバコに火を付ける。

「彼氏いんだろ」

「…多分。一応…」

「…だろうな。深くは聞かない」

「なんで?」

「口説きづらくなるから」

朋久は沙織の隣に座る。
「サイテー。やっぱりチャライんだね…」

「そうかな」

「そうだよ」

沙織は 朋久が なんだか 面白くて 仕方なかった。
実際 軽いか どうかなんて わからないし

単に偶然が 重なりまくって 今日は そうゆう日なんだと 思った。

「そっちにも彼氏みたいのがいる。こっちにも彼女みたいのがいる」

「で?」

沙織は、朋久の次の言葉を待った。

「付き合おうか?」

チャライ。

「いいよ」

沙織の意外な返事に 朋久のほうが びっくりした顔になる。

「…なんて、ゆうわけないじゃんか。バカ。チャラ男」

「…なんか、俺、あしらわれてる?」

「みんなにそう言って、何割成功?」

「アハハ。んな、ゆってないし」

「嘘だ。軽い」

軽い。

例えば、朋久が軽くたっていいのに。

なぜか、沙織は 少し 寂しい気持ちになった。

「いつまでいるの?」

沙織はなんで こんなことを聞いてしまったのか…。

「うーん。ここの完成が週末しかこねーからあと2ヶ月はかかるかな…。なんで?チャライ俺が気になる?」

朋久は、ニヤニヤしながら 沙織をからかうような 言い方をした。

「別に…」

沙織はなんだか、ほんとに 恥ずかしくなってきた。

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