嘘恋
二人は、帰り道の途中にある 小さな公園に入った。

ブランコに腰かける。

「食べる?」

沙織はポテトを1本つまんで 朋久に 出す。

朋久は、そのまま パクリとポテトを食べる。

「ハイヨ」

沙織に 暖かいお茶を渡すと 自分は 缶ビールを開けた。

「沙織ちゃんいくつ?」

「17。誕生日まだだから。浅野さんは?」

「20…。でも誕生日きたら21。4月なんだ」

「私、3月3日!プレゼント受付中〜」

「いいよ。何ほしいの?」
朋久はさっき買ったばかりのマルボロの封を切る。
「冗談だよ」

「いいじゃない」

「欲しいもの、ないんだ…」

沙織は、本当に 品物で 欲しいモノが なかった。
「じゃあ、俺が勝手に選ぼう。俺センスで」

朋久は、夜空を見上げて…

夜空に向かって タバコの煙を ふーっと 吹き出した。

その 仕種が ちょっと かっこよく見えて、気づかないうちに 沙織は朋久に見とれていた。

「どした?」

我に返る沙織に、昼間と同じ様に

朋久は大きな右手を差し出した。

「帰るか」

沙織も右手を差し出した。

朋久はその手を、握ったまま 歩き出した。

沙織には 不思議な感覚だった。

「浅野さん、遊び人?」

「またぁ?」

朋久は笑いながらまたかょ と 困った顔をする。

「んなことないとおもうよ。俺、引きこもりだからな。アハハ」

「遊び行くでしょ?」

「クラブとかってこと?」
「とか、まあ、そんなかんじ」

「クラブ嫌いなんだよな。音楽もよくわかんないし。踊るのも苦手だし」

意外だった。

なんとなく 派手で目立つ外見から そーゆー 遊びが 簡単に想像できちゃう感じなのに…

「クラブ好きなの?」

「進んではいかないけど、誘われたら行くかな…」

「俺もそんなもんだよ。休みは海かうちにいるし。寝るのも早いしな」

「アハハ!年寄りか〜」
「早寝早起きがからだにいいんだって」

たわいもない会話をしながら 帰り道は 行きの半分くらいの時間と距離に感じてしまった。

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