嘘恋
せつない気持ち
「…ん……」

朋久は、気持ち悪さで目覚めた。

飲み過ぎ、二日酔い…。
布団を部屋の隅にかたづけると、リビングへ向かう。

すでに、父親は 朝食を済ませたらしく お茶をすすりながら新聞に目を通していた。

「おはようございます」

「おお、おはよう。顔洗ってこいよ、朝飯前に」

朋久は、洗面台へ向かう。

先客がいる。

「あ、はよーす」

千恵は歯ブラシをしながら もう 終わるからと 言った。

千恵と入れ代わりに 朋久も顔を洗う。

「昨日どうだったです?」
千恵は、朋久の横で 少し ニヤニヤしながら 話し出した。

「何が……?」

「別に、…。何もないならないだけど」

「何もないっすょ」

二人は、ダイニングへと戻った。

「あれ、お母さんは?」

「隣かな。長話してんだろう。あれ、千恵さ、ご飯用意してやれよ。ね」

父親は、ソファーに寝転がりながら まだ 新聞を読んでいた。

「千恵ちゃん、俺飯いいよ。二日酔いでさ」

千恵は、オレンジジュースとコーヒー どちらが いいかと聞く。

「じゃコーヒーもらえる?」

「飯くわないのか?」

ソファーから 父親は 立ち上がると ダイニングテーブルへ着席した。

「飲み過ぎちゃって…」

「…俺も、ハハハ」

ふたりして 二日酔いらしい。

「これ飲んだらやりますから!」

「ゆっくりでいいよ。急いでないから」

裏庭には 4畳半の 父親の書斎を作っている。

「屋根さ、いまから木材に出来る?」

「全然オッケーっすよ。木にします?」

「なんかさぁ、ログハウスみたいのも渋いかなと思ってさ」

父親は設計図を眺めながら 嬉しそうに話をしている。

「ムクとかもかっこいいですよ」

「コレかかっちゃうなぁ…」

父親はお金のサインを出した。

「お母ちゃんにまた言われちゃうよなぁ」

朋久は

「あるもんでよければ、金かけないとこはかけないようにして、予算内でやりますよ。材料ももう買わなくてもうちにあるし」

そう言いながら 設計図に手直しをしていく。

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