嘘恋

「あたしだ…」

マツからの着信。

「もしもし」

『やっと繋がったー。全然返事ないし、なんかあったかとおもった』

「ゴメン、疲れて寝てた…」

『うち?』

「いまちょっと出てる…」

『こんな早くに?なにしてんの?』

「…」

気まずいやりとりと 沈黙の空気間。

見兼ねて 千恵は 沙織から携帯電話を奪い取った。

「やぽ。マツ！！！」

『千恵?は?なにしてんの?』

「ちょっと、私事に沙織を借りてんのよ★★ゴメンね〜」

『そうか、わかったょ。なんか沙織昨日から暗いからさ…』

「アハハ、暗くない、暗くない。サオタンにかわるね」

千恵は携帯を沙織に渡す。

朋久は、タバコに火をつけて 深く 息をした。

いちいち、こんなやり取りに 聞き耳を 立てている自分が居ること…

「そうゆうわけだから、帰ったら電話するよ…」

沙織は通話を切った。

「…大丈夫か?」

朋久は自分の問い掛けに 仮に ダメ だとして どうなるんだよ

思わず ツッコム…

大人の振る舞いを せねば。

焦れば 焦るあまりに 余計に ドツボにハマル…

「昼過ぎには戻れると思うよ」

車内の空気は まるで 変わらない。

「てかさ、しゃーなくない?アハハ。マツ、タイミング悪ー。以上」

千恵は、沙織の肩を叩く。

反応がない。

「さお?」

少しして、小さく 寝息。
「寝てる………」

朋久は、あんなにくどくど考えていた 自分がおかしくてたまらなくなった。

「サオタン、マイペースすぎ……」

さすがに 千恵も どっと 疲れが のしかかる。

「眠かったんだな…ハハハ」

朋久は、沙織の寝顔を なんだか 面白くも かわいくもあり

裏も表もないような この少女を。

愛おしく感じていた。

昨日も遅かったし 今朝も早起きさせられて…

「千恵ちゃん、ありがとうな」

「何で?」

「大人の対応に…」

千恵は、高いよ と バックミラーごしに 朋久に言った。