嘘恋
マツはベッドに腰かけると、沙織に 小さいピンクの紙袋を渡した。

「はい」

「どうしたの?」

「合格祝い…たいしたもんじゃないよ」

「あけてよい?」

沙織は 紙袋から小さな箱を取り出した。

更に 結びのリボンを解いて 箱を開けた。

ピンクゴールドのハートのネックレス。

「かわいい…ありがと」

「貸して」

マツはネックレスを 取ると 沙織の首に手を廻した。

「かわいい。似合ってる」

沙織は、かばんから鏡を取り出して、ネックレスの具合をチェックした。
「かわいい、ありがと、マツ君」

マツは照れたように 笑っていたが…。

しばらくして 言いにくそうに。

沙織を抱きしめると、そのまま、キスをしてくる。

沙織の体はローソファから ズレて カーペットの上。

その上には、マツの体。
夏から 半年。

二人はまだ、キスしか していなかった。

多分 きっと マツが さっき 旅行に誘ったのは…

そうゆうことだろう。

マツの右手が、沙織の胸を触る。

沙織はしばらく、流れに身を任せていたが、

マツの手の上に、自分の手をのせた。

「…ゴメン、…もう少し、待ってほしい…」

マツは、沙織から離れると 麦茶を飲み干した。

「ゴメンね、…」

沙織のその言葉が
更に マツを苛立たせた。
「…謝んなよ…。余計に傷つくわ」

「あたし、帰るわ…」

「…送るよ」

「大丈夫大丈夫!」

マツは、それ以上 何も言わなかった。

玄関先で、マツは沙織に
「全部終わって落ち着いたら、旅行いこう…」

「うん、行こう」

まだ なにか いいたそうなマツを 振り切り、

沙織は 家路へ急いだ。

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