嘘恋
同じ 時間、

こちらは 都内の ある場所。

「で、付き合ってんの?」
千恵の声が 響き渡る。

「声、でかっ」

雄二は千恵のおおきな声に驚く。

「それって、愛してないじゃんか」

「わかんないよ。それなりかなとはおもうし、浅野もなんもいわねーし。…」

渋谷のホテル街。

千恵と雄二は、とりあえず 一通り済ませた あとだった。

朋久が 雄二とは 一番なかがいいと 言うから 千恵は 朋久のことを 調べていた。

探偵か…。

雄二の長い まとまりのない 話しを まとめると…。

朋久は中学高校と専門学校時代にはずっと バンドをしていた。

今の彼女は、小さい頃からの友達で朋久のバンドを応援していた。

朋久も 彼女を大切に思っていた。

高校2年の ある日 ライブ帰りに 彼女は事故に合う。

本当だったら、朋久が 合うべきだった事故。

飲酒運転の車が 朋久と彼女や 友達が たむろしていたところへ突っ込んできたのだ。

この事故で バンド仲間は一人が亡くなり、全員が 重軽傷を負った。

朋久が 一番軽傷だったのは、彼女がかばってくれたからだった。

彼女は そのおかげで首のつけねから左肩に 傷が残った。さすがに 傷は うすれてきたが

後遺症。

左側の手が 時々 痺れる。手に 力が入らない。

朋久だったら。

きっと ギターが 弾けなくなっていた。

それから しばらくして 二人は 付き合いはじめて 今に 至る…。

「すきにのかな、アサノッチは」

「あいつ、事故まではもっと単純にばかだったんだよね。事故以来、変わったね、まあ、仲間も死んでるし、涼子ちゃん、あ、彼女ね。涼子ちゃんも抱えてるし」


ふざけていて 遊んでいる風でも 時折 もの悲しい顔になる 理由が わかった。




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