嘘恋
「あたし、自信ないんだよ…」

「何にたいしてよ」

「わからない。自分に?」
「あたしに聞くな…。あのさー、マツより今は浅野さんが好きになっちゃった。だけじゃダメなの?他に理由あるの?理由ないとダメなの?」

千恵は沙織の考えていることは わかっていた。

お互いに 恋人がいる。

Hしてしまった。

好きになりかけている。
悪い部分も あるだろう。
マツや朋久の彼女に対しては…。

そこを 都合良く 無視…とは思わないけれど。

誰かを好きになるときに 必要なものは 理由 ではない。

例えば。

スゴク 優しい人がいた。
その人を好きになってしまった。

なぜ?

『優しいから好きになった』?

なんとなく それは 違う。

優しい という 一つの要素なだけ。

優しいだけで 好きに なるなら 毎日 だれかと いろいろ 付き合ってるしかない。

みんな 大概 優しいでしょう。

それを 『理由』と するか 『要素』と するかで
とらえかた 変わってしまう。

それくらいの こと だということを わかっていたら いい。

「浅野さんのこと、好きになってるよ。ただ、考えなくちゃいけないことはたくさんあるよね。片思いでも2番目でも、そこはいいんだ」

千恵は いままで 見たことがない 沙織に 驚いた。

今まで 片思いは あるにせよ、2番目でいい なんて そんな発言 なかったから…


「マツには、今すぐにでも話そうと思ってる。今、あたしが出来ること、マツに対してきちんとしたい」


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