嘘恋
そのせいで、彼は、何も 罪のない 相手に嘘をついたという現実。

「ごめんなさい。ほんとに。適当に停めてください」

トモヒサは、次の一番近い駅で降ろすよと言った。

駅までの数分間。

「ごめんね。ちゃんと話すよ、ま、関係ないか…」

沙織は無償に腹が立った。

関係ない。

簡単なこと。

無かったことにする。

車は駅に着いた。

どこの駅だろうか。

降りたことのない 駅。

「ありがとうございました。さようなら」

沙織は、うつむいたまま 車を降りた。

「気をつけて」
トモヒサも俯いていた。
沙織の後ろ姿。

トモヒサは、車を降りて走りだした。

「沙織ちゃん…!待てよっ」

沙織は後ろから 肩を捕まれて、驚きの余り、カバンでトモヒサを殴ってしまった…。

「ってぇ……」

「あ、浅野さんっ、ゴメン…」

「大丈夫、大丈夫、…それより…」

トモヒサは、

「関係なくないよな。君になんて思われても仕方ないんだけど、…さっきの電話は、彼女とゆうか、まあ、そんな感じの人なんだけど、なんてゆうかな、…。で、今日君とぶつかって、あのままバイバイすりゃよかったんだろうけど。…」

トモヒサは、ここまで喋ると、急にばつが悪そうな顔をした。

「…なんですか…?」

「君を見て、かわいいなとおもった。もっと話したいなと思った…。千葉の現場は嘘じゃないし、電話の彼女にはちゃんと話すよ。…それだけ、言いたかった。楽しかった。…また、どこかであったら、…あわないか…」

トモヒサはまた、笑った。

会わない確率の方が 格段に高い。

「…私も、楽しかった。さっきは浅野さんのことだけ責めたんじゃないの。自分がいやになってしまって…」

「君がゆってること、間違ってないと思う。あのさ、答えたくなかったらこたえなくていいから、最後に聞いていいかな?」

「…ん、うん。なに…?」
トモヒサの質問と同時に沙織の携帯がなる。

「先、でていいよ」

トモヒサは、沙織の電話が終わるのを待つ。
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