嘘恋
千恵がなにより 驚いたのは 最後のマツの話だった。

さっき マツは 沙織に。
『ホントのこと教えてやるよ。俺、せーかくには俺ら…。お前のこと賭けてたの。誰と付き合うか。いつヤレルカ。なかなかお前、ひっかかんねーし。ひっかかったと思えばヤラセないしさー。賭けに負けてばっかだったから。これでやっと勝てたわ』


俺ら。

沙織にも千恵にも 大体しかわからないのだけれど
教習所仲間…

ただ はっきりとは わからない。


「マツ、最低だな…。全然きづかなかった私らもアホだけど…」

千恵は沙織を抱きしめた。

千恵の携帯が鳴った。

朋久だ。

「はいはい」

『どうした?大丈夫?』

「うん、大丈夫、少ししたら戻るから」

『…そうか…わかったよ。沙織は?話せる?』

「…あ、今トイレ行ってるから、かけ直すよ」


千恵は電話を切ると

「浅野さんに言わない…よね…」

こんなこと 朋久が知ったら 軽蔑されるか…

いずれにしろ 良い結果になるわけなどない気がした。


「千恵、浅野さんにかけ直すから、うまく言ってくんない…?」

千恵は 頷いた。

「じゃあ、あたし戻るから、あとは話し合わせるよ…なんかあったら、電話してね」

沙織は千恵を見送る。

なんでこんなことに なってしまったのか。

沙織が朋久を 好きになる以前に…

マツには ずっと からかわれて 嘘をつかれていた。

そうゆう オチだ…。

体も

心も

一気に バランスを失った。

そのまま 沙織は 疲れて眠りについた。

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