嘘恋
「殴られたのか?」

なにも言わずに ただ うつむいている 沙織を見て 殴られたことは 間違いないと確信した。

「大丈夫、これだけだから…。しかたないよ。あんな…とこ見られたし…」


朋久は 沙織を抱きしめる。

「ゴメンな、俺があんな軽いことしなきゃ…」

「浅野さんのせいじゃないよ…。いつかは別れてたし…」

朋久は沙織の言葉の意味がわからなかったが、

とにかく 沙織を抱きしめていた。

自分のせいで こんなことになってしまったこと。

「あたし、シャワーしてくる…」

「あ。うん……」

朋久は、 タバコに火を点けると 深く呼吸をした。

沙織はシャワーを終えると 朋久にも シャワーしたら と 言った。

朋久は とりあえず シャワーを 終えて 出ると ベッドに沙織が 横たわり テレビを見ていた。

「なんか飲むか?」

冷蔵庫を開けて 朋久は沙織に話しかける。

「ビール…」

「はあ?まぢで?」

「まぢで…」

朋久は缶ビールを2本取り出すと、

一本 沙織へ渡す。

プルトップを開ける。

「乾杯」

朋久は缶ビールをかちゃんと 合わせる。

沙織は あまり飲めない ビールを3分の1くらい飲み干す。

「おいおい…大丈夫か…?」

「大丈夫だよ」

そして、朋久のタバコを とると 1本取り出した。
「すいたい」

「どうしたの?」

様子のおかしい沙織。

「吸ったことないから…」

朋久は、タバコに火を点ける。

沙織は どのタイミングで 煙を吸い込めば良いか…わからずに むせる。


「…まっずぃ…」

沙織は これはいいやと すいかけの タバコを朋久へ渡した。

「大丈夫か?」

「タバコはだめだぁ…おいしくないっ」

「アッハハっ。そのほうがいいよ、体に悪い」

朋久は 渡されたタバコを吸った。

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