何度でもなんどでも
その時、横から出てきた手がその男の腕を振りほどいた。
この手。
この声。
香り。
私も懐かしさで固まってしまっている横で、
その人、佑がにこっと笑って
「お客様、メイドへの”直接交渉”はご遠慮願います」
と言いながら、私の腕をつかんでぐっと自分の後ろに隠すようにした。
他のお客さんからも「やりすぎだよ、お前」
なんて声をかけられながら、その男子生徒はお店から出て行った。
私は、そのまま引っ張られるように奥まで連れて行かれる。
佑。
つかまれる腕が熱くて。
まるでそこに心臓が集まってるみたいに。
バックヤードで腕を放された。
「しばらく休んでていいから」
「ありがとう、ございました…」
佑は何も言わずにまたホールへと戻って行った。