何度でもなんどでも

ホールの喧騒と違って、ここは静かで。


悲しみが口から目からつきやぶって出てきそうだ。



佑。



一度も私と目を合わせてくれなかった。



自分で勝手なことを考えてるってわかる。


わかるけど、



今更ながら


「別れる」


ってこういうことなんだって、


実感として身に染みていく。






「実桜、大丈夫?」


駆けつけてくれたのは陽太郎。


「加奈子に言っておくから、先帰っていいよ。実桜なんか顔色悪いよ」


「ごめん。じゃぁ先に帰らせてもらうね。皆に謝っておいてもらえるかな」


「わかったよ。今日はありがとうね」



そういえば、お祭りの時もこういう風に陽太郎に甘えたよね。


「陽太郎!」


いったん戻りかけた彼がもう一度カーテンの隙間から顔を出す。


「ありがとう」


そう私が言うとにこっとしてまたカーテンの向こうに戻っていった。





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