君しか見えない
「羨ましいよ凜花は。それだけ思われて大事にされてるって事だから」
これは本音…
私なんか、出会って直ぐに身体を重ねた……
そうする事でしか、マサシの気持ちを繋いでおけなかったから…
「沙織…卓君振った事あったんだって?」
凜花が意外な人の名前を口にした。
…そうでもないか…
陵弥の親友だし。
「本人に聞いた?…だよね…陵弥の友達だもんね…」
「好きな人がいるって…」
好きな人か…正確には好きだった人だけど…
私は鉄柵に背中を預けた。
「…聞いたら…引くよ…」
「…何で…」
……………
「…私…不倫してた…」
凜花が唖然とした。
当然だ…凜花にすら話していなかったんだから。
私は凜花に全てを話した。
涙目になりながら凜花は私の話しを黙って聞き終えると。
「…今は…その…」
「終わりにした。つうか振ってやったし」
私は空を見上げた。
梅雨の曇り空が、私の心みたいで、いつ涙雨を落としてもおかしくない………
「なら…俺にもう一回、チャンスくれない?」