10年後の約束
30分くらい経った頃。
山中は自分が指示された仕事が終わったらしく、帰っていった。
教室は2人きり。
急に胸が高鳴った。
ドキドキしている。
でも先生の方は振り向かず自分の作業に集中した。
『あのさ、』
声をかけられた途端ドキンと胸が音を立てた。
また嫌な話題に触れられるかもしれないと思い、怯えていた。
『これ、文字逆に貼ってるんだけど』
『え?』
あ……。
やっちゃった…。
『動揺してんの?』
『してません』
つい、冷たい態度を取ってしまう。
『言いたくなきゃいいけど…。何かあんの?俺でいいなら話し聞くけど』
『何もないですって』
この先生がこんな言葉を発したのには少し驚いたけど…。
お互い落ち着き払って言葉を返していく。
『そりゃあ今日初めて会ったやつを信用できないかもしれないけど、話せば楽になるぞ?』
楽になる…?
誰にも話せない。
話したら友達みんないなくなりそうで怖いから。
話す勇気なんてある訳ない…。
こんな私にそんな権利はないよ