シャンゼリゼで待ち合わせ
店内にお客さんがいなくて、本当に良かった。
泣きじゃくる顔なんて、親友以外には絶対に見られたくない。
と思った矢先。
調理場と売り場を隔てるガラス越しに、明日の仕込みをする店長と目が合ってしまった。
怒られる、と覚悟を決めたけど、店長はにやりと笑って、また仕込みに戻った。
でも本当は、にやりとしたんじゃなくて、ニコッと微笑んだつもりだったのかもしれない。
辞めることも、怒鳴ったわりにあっさり許してくれたし。
それが、不器用な店長なりの優しさだったのかな。
そう思ったら、それもまたうれしくて、さらに泣けてしまった。