シャンゼリゼで待ち合わせ
「ところでさ、怜奈」
腫れぼったくなった私の目を覗き込んで、紗江子がなにやら不敵な笑みを浮かべた。
「なぁに?」
紗江子は、うふふ、と含み笑いなんかしている。
「彼には、会うの?」
「…!」
彼っていうのは、もちろん祐太…じゃない。
ウジェーヌのことだ。
「会わないよ」
「えー、どうして!せっかくのチャンスなのに?!」
ウジェーヌというのは、私たちが高校生のとき、紗江子の彼氏の家にホームステイしていたフランス人の短期留学生のこと。
当時私は、あまりにも絵になる外国人にのぼせ上がって、祐太を困らせたことがある。
ウジェーヌが帰国してからも、ずっとメールで連絡は取り合っていたけれど…。
「さっそくメールで聞いてみたらね、ちょうどその時期、ウジェーヌは彼女とイタリアに旅行に行くんだってさ…」
あまりのタイミングの悪さに、私はパソコンのメール画面の前で、開いた口がふさがらなかった。
「なぁんだ、残念だね」
「まだこれからフランスに行く機会だってあるだろうし、そのときの楽しみに取っておくよ」
なんて言っておきながらも、実は私が一番がっかりしてたりして。