シャンゼリゼで待ち合わせ
「そうだ、これ。メリークリスマス!」
気を取り直した祐太が、手に持っていたモノを私にくれた。
それは、さっき遠くで見たときに包みだと思ったもので、実はぬいぐるみだった。
黒い大きな耳だけでも、私の顔の大きさくらいはある。
「私、クリスマスもまだフランスにいるんだから、プレゼントにはまだ早いよー」
ぬいぐるみでご機嫌をとるつもりかもしれないけど、そう簡単にはいかないんだから。
全然日本に帰ってこないし。
誘いは突然すぎるし。
迎えにも来てくれないし。
どれだけ焦らせば気が済むのよ!
並べればキリがないほど、言いたいことは山ほどある。
全部聞いてもらわなくちゃ。
紗江子の気持ちがうれしかったこと。
店長は不器用に優しかったこと。
パパとママが祐太に会いたがっていたこと。
たくさん、たくさん、聞いてもらうんだ。