【実話】ただ、普通の幸せがほしかった
「佐々木いるの?
早くしないと練習はじまるよ」


その声は、同じ学年の田村と山崎だった。


田村と山崎は、部員の中でも、一番私と仲良くしてくれた。

「ねぇ、いるんでしょ?返事してよ」


「佐々木さん、どうしたの?」


何度も呼んでも返事をしない私に、

不思議に思ったのかドアをノックしながら名前を呼んできた。


「いいかげんしないと怒るよ、もう先にいっちゃうよ」


「・・・・・」


今度は、激しくドアを叩いてきた。


「ねぇ、本当にどうしたの?」


「佐々木さん、ぐあいでも悪いの?
先生呼んでこようか?」


そして、私は、目を開き左手首を下ろしたままトイレの鍵を開けた。
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