黒衣の牙狼
東京都新宿区の一角

京王線にほど近い場所に、その廃ビルはあった

道路と敷地を区切る囲いには『立ち入り禁止』の文字

切れかかった街灯が、その文字を夜の闇の中、照らし出している

「そろそろか」
赤いジャンパーを着た竹虎が、携帯で時刻を確認した

夜11時

竹虎は、道路から敷地に入る扉の前で、あたりをキョロキョロ見渡した

この時間になると通行人はほとんどいない

もちろん、それがこの廃ビルを選んだ理由でもある

― バイクのエンジン音が耳に届いた

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