黒衣の牙狼
「いえ、違います」
案内役の男が室内への扉を開いた

「・・・・・・これは」
部屋の中央に置かれた一斗缶から、炎が立ち登っている

「・・・明かりか」
弐社が、光の揺らめく室内を見回した

― 電気の通っていない廃墟

懐中電灯を片手に戦う訳にもいかない

それにこの部屋は、階の中央に位置しているのか外に面した窓はない
外部の人間に明かりが見つかる心配はないという事だ

弐社の目が、炎の向こうに立つ人物を捕らえた

闇と火の陰影に照らされた男の顔

(・・・・・・こいつだな)
直感した
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