ホワイトデーまでの賭け(短編)
そして、バレンタインデーから一ヵ月後の夜のことだった。
いつものように夜中に帰宅すると、ダイニングに俺が置いたのではないビニール袋がそこにあった。
『パパへ』
今度入学する長女が書いたのだろう、クレヨンでたどだどしくそう書かれている2つ折りの画用紙が一緒に置かれていた。
開くと色鮮やかな絵と、まだしっかりとした形が整わないひらがなが目の入った。
『パパ おしごとがんばってね』
『いつもおかしをありがとう』
下の息子が書いたのだと思われる長女が書いたよりいびつな文字もあった。
俺はそれを握り締めて泣いた。