ホワイトデーまでの賭け(短編)
『あいつも、選ぶのに必死だったんだろうか?』
さっきから目の前でOL風の女性があれこれと手に取っては戻している。
そんな姿をみているとなにやら記憶の奥から引っ張り出されてきた。
それは……
琴絵とまともに話しをしたのは今から10年前のバレンタインデーだった。
その頃の俺は、営業でも下っ端でいつもドジをしては上司に怒られているような男だった。
いや、今もあまり変わりないかもしれないが……
そんな俺にそっとチョコを渡してくれたのが同じ年の琴絵だった。
課が違うが同期だったということもあり顔だけは知っていたが、まさか彼女から本命チョコを手渡されるとは考えてもいなかったことだった。