妹なんていらない
「ほらほら!

主役はここ、ここ!」



母さんが楽しそうに俺の背中を押しながら定位置らしい場所に俺を座らせる。


俺はもう半ば無理矢理な感じで座らされたため、何が何だか分からなくなっていた。



「よぉし、それじゃあケーキタイムですっ!!」



千鶴はテンションが高いまま、台所へと走っていってしまった。


そして、ケーキ、と呼ばれたものを持ってくる。



「………ケーキ、だよな?」



そう、それはたしかにケーキなのだ。


生クリームだってついているし、イチゴだって乗っかっている。


円形にさされたろうそくは全部で18本。


これをケーキと言わずになんと言う。




「これ…誰が作ったんだ…?」



ただし、芸術点は間違いなく最下級だ。


生クリームなんて無理矢理塗りたくったみたいだし、イチゴは上を向いてたり、下を向いてたり、右に左。


ろうそくの二、三本はケーキに埋もれてる。



まあ、千鶴がケーキと言ったんだ。


これは、ケーキ、なのだろう。
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