妹なんていらない
「いやあ、いい妹もったよね〜、高橋くん♪」



やけに楽しげな口調の雨宮。


だが、そんなからかい口調も今の俺は気にならなかった。



そういえば美波がいない。


あいつ、自分で5時まで帰ってくるな、とか言っておいて、まさかいない?



「ああ、みぃちゃんなら…」



キョロキョロと辺りを見る俺の意図を察してか、千鶴がソファーを指差す。


そこには、小さく体を丸め、まるで子猫のように眠る美波の姿があった。



「美波ね、ここ最近は深夜にケーキ作りの練習をしてたのよ。

純一くんに見られるのが恥ずかしかったみたいね」



「深夜にって………」




おいおい。


それじゃあこいつ。


俺が寝静まった頃に、こっそり起きてケーキ作りなんかしてたのか?



何でそこまで………



「ほら、美波って素直じゃないし、不器用でしょ?

高橋くんは分からなかったかもしれないけど、いつも美波は感謝してたんじゃないかな?」



「……………」




俺は、すやすやと眠る美波に視線を送った。
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