妹なんていらない
「千羽鶴…か。

私…いったい何枚折ったんでしょうね?」



自分の手を握っては開き、握っては開き。


そして、ふいに立ち止まり、空を仰ぎ見る千鶴。



「先輩は、私の名前の由来、知ってます?」



「名前の由来?

えっと…千鶴だから………」



千の鶴。


ああ、なるほど。



「わかりましたか?

千羽鶴です」



そう言われ、俺は千鶴の部屋に散乱していた折り鶴を思い出していた。


自分の名前の由来になったもの。


それを千鶴は、何を思い、何を感じていたのだろう。



「千羽鶴、不思議ですよね。

人の願いを一心に受ける存在。

そして、それを叶える存在。

そんな、人を幸せにする存在」



「それが、千鶴の名前の由来なのか?」



「そう言われました。

まあ、私がそんな存在かと言われると、荷が重いというか………


名は体を表す、とは言いますけど私には合いませんでしたね」




そう言って笑う千鶴。



正直、俺にはそう思えなかった。



だって、みんなの願いを一心に受けるような、人を幸せにするような、そんな存在だろ?




「先輩っ!

帰りにクレープ食べていきましょうね!!」




屈託のない笑みを浮かべる千鶴。


そんな笑顔を見ながら俺は――



「ばあか、晩飯前に食えるか」




その名前が、とてもぴったりな気がしたんだ。
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