LIFE IS MONEY…
「ありがと」


そう言いドアに手を掛けたアタシに向井さんは



「あの…大丈夫ですか?」


気まずそうにそう言った。



「何が?」



「いや、すみません。なんでもありません。いってらっしゃいませ」




夏バテ気味のアタシを心配してくれたのかもしれない。疲れた顔のアタシを心配してるのかもしれない。
だから…




「大丈夫。ありがとね」



そう言い車を降りると、ベンツは静かに動き出し、あっという間に視界から消えた。



高い高いマンションを見上げる。小さな笑いが込み上げてくる。初めて来た時、向井さんに付いてきてもらったっけ…今のアタシはそんな可愛らしい女じゃない。アタシは変わった…




慣れたあしどりで、エレベーターに乗り、慣れた手つきで鍵を開ける。
部屋から見える景色も。
無駄に広いリビングにも、驚く事はもうない。
人間慣れるとそれが当たり前になる。



アタシは、真っ先に寝室に行き、クローゼットを開けスーツを脱ぎセットアップに着替えた。
< 98 / 190 >

この作品をシェア

pagetop