赤の疾風


「拙がいつ貴様らの長になどなった!?
拙は先代の長が死んだ日に天狗を棄てたのだ!
貴様らとはもう何の関わりもない!

寝言を吐くのも大概にしろ!!
邪鏡(じゃきょう)!!」


邪鏡と、そう呼ばれた烏天狗は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにさっきまでの嫌な形に細めると、


【まさか儂の名を覚えていようとは、これはしたり。
裏切る前は、同胞を思いやってくださるお方とお慕い申し上げておりましたものを……。

貴方様の“神通力”ともども……。】


萬天の左胸にあたる部位を指差し、低くそう言った。


…神通力とは、妖怪なら誰しも身に付くと言われる霊力の一種だ。

特に狐と狸、そして天狗は、強い神通力を持っている。



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