赤の疾風
その言葉に、梳菜はぽうっとした顔をして、
そして嬉しそうに一言。
「は、はい…
「梳菜あぁーっ!?
あんた一体何やってんだい!?こっちだって暇じゃないんだから、さっさと来なーっ!!」
…心を込めた一言は、女将の怒声でいとも簡単にかき消されてしまった。
そう言えば時間が押していたことを思い出して、梳菜は暫し慌てた様子で宿屋と、
萬天を交互に見ると、
「ま、またお会い出来るのを…楽しみにしとりゃす…っ。」
丁寧に一礼してから、パタパタと宿屋の中に姿を消したのだった。
後に残された萬天は、少女の消えた暖簾を見つめながら、
「梳菜…か…。」
さっきまでの出来事を思い返すように、少女…梳菜の名を呟き、
しゅんっ…
一陣の風音と共に、一瞬にしてその姿を消した。