赤の疾風


萬天はあまりの歯痒さに、唇を噛み締めた。

血が滲もうとも構わない。
これほど、目の前の同胞に殺意が湧いたことがあっただろうか。


【分かっておりますな?

時はもう迫っている。】


「ッ、下衆が……!!」


―――どうするべきだ…?


―――拙は、どうすればいい?

―――命を秤にかけ、どちらかをとらねばならないのか…?


どうすればいいのか。

判断に迷う萬天は、まるで子どものように虚弱に見えた。


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