赤の疾風
「ひっ……!」
途端に恐怖が込み上げてきた。
当然だ。
顔も知らない男のために、何故自分が身代りとなって死ななければならない?
この、黒い頭をした人間の群れの中で、一人だけ金色の髪を持った梳菜は、まさに独りきりの状態だった。
「目が覚めたか、小娘。」
「っ!!」
ふいに前から呼ばれ、梳菜は目に涙を浮かべた状態で向き直った。
そこには、宿屋で自分を連れ出した役人の一人…。
吉代に刀を抜いた役人が、嘲笑して立っていた。