赤の疾風


病で長くは生きられない。

それなのに、こんなところで…こんな形で死ぬなんて。


―――まだ、あのお人に…逢っていないのに……。



じきに、太陽は既に西へ傾きつつある。


こうしてる間も、萬天は自分を待ってくれているかもしれないのに。


死への恐怖。

逢えないことへの口惜しさ。


……それらを考えると、自分の意思に反して、涙とは流れてくるもの。


< 124 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop