赤の疾風
小窪がたじろぎ身を引いても、梳菜は叫ぶことを止めない。
大人しい彼女からはとても想像できない声だ。
「そのとき、はっ、ほんとに…っ!!
わたし、い、要らない、子だと、っ!!
思うて、おりゃんした…っ!!
でも、っ、貴方様、だけは、違う…!!
わたしを人として…っ、見て…!!」
だんだんと涙が止まらなくなってきて、梳菜の泣き声はほとんど嗚咽が混じり、集中しないと聞き取れないほどになっていた。
それでも声を止めないのは、
本当にこれを聞いてほしい人がいるから…。
今ここには、いないとしても。