赤の疾風
「死ぬ前にっ、ほんとは、お会いしてっ、言いとうござん、した……!!
…まっ、萬天、殿ォ……!!!」
いつしか観衆の中に、梳菜を罵倒する者は一人としていなくなっていた。
皆が、死に際の少女の言葉に、耳を傾けていたのだ。
梳菜は何度か嗚咽を繰り返すと、
溜めこんでいた泣き声と共に、
まるで、産声のように、
「とても、感謝しとります…っ!!
…あり、がとお、ぉ……っ!!!」
空高く、泣き叫んだ。
空は、自身の瞳と同じように、残酷なほど、綺麗な青色をしていた。