赤の疾風


「死ぬ前にっ、ほんとは、お会いしてっ、言いとうござん、した……!!



…まっ、萬天、殿ォ……!!!」



いつしか観衆の中に、梳菜を罵倒する者は一人としていなくなっていた。

皆が、死に際の少女の言葉に、耳を傾けていたのだ。


梳菜は何度か嗚咽を繰り返すと、

溜めこんでいた泣き声と共に、


まるで、産声のように、



「とても、感謝しとります…っ!!


…あり、がとお、ぉ……っ!!!」



空高く、泣き叫んだ。


空は、自身の瞳と同じように、残酷なほど、綺麗な青色をしていた。


< 127 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop