赤の疾風


その萬天の片手には、いつか梳菜に贈ろうとしていた赤い髪飾り。

鉄で出来た櫛の部分が、刀の一閃を上手く食い止めていた。


受け止めることに成功した萬天は、この上無いしたり顔で、挑発的に小窪を睨んだ。



その姿をやや惚けながら見つめていた梳菜は…、


―――あれ……?


ふと、病による痛みが和らいでいることに気付いた。


―――まさか………。



導かれるように、萬天の顔を見上げれば、


小窪が、悔しさを露わに、醜く叫んだ。


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