赤の疾風
壱
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梳菜と萬天が遠く離れたのを確認すると、林火はひとつにやりと笑った。
【さて、もう良い頃か…。
ここまで派手に苦しむ真似をするとは、人間とは珍妙な生き物よ…。】
少し名残惜しむように、踊りでも踊るかのように慌てふためいている人間達を見つめてから、
林火は一言、こう言った。
「“ぽんっ”。」
それが、全ての幻の消し方。
林火の掛け声が辺りに響くと、たちどころに炎の渦は勢いを弱め、みるみる収縮していった。
そして握り拳ほどの、もとの林火に戻ると、それすら“ぽんっ”と音を立てて消えてしまった。