赤の疾風


視線を感じ、萬天は少し躊躇いもしたが、

真っ直ぐ梳菜の目を見つめると、言った。


「梳菜…。

拙は、人間ではない。



拙は妖怪……。
それも、神通力を持つ、強力な妖怪だ。


……お主がいつか言った“とっと”は、間違いではないよ。」



薄く浮かんだ笑顔と共に、萬天の背中に、二枚の大きな黒い翼が現れた。


カラス色をしたそれは、自分がまさに、“天狗”であることの証。


< 153 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop