赤の疾風
背に美しい翼を生やし、自分の病を留めてくれ、…自分の命を救ってくれた。
梳菜にとって萬天は、思い描いた天使そのものだったのだ。
日本のみで育った者なら、誰しも嫌悪するだろう妖怪。
それを、少女はむしろ崇拝の気持ちで受け入れたのだった。
「……梳菜。
拙はてんしに見えるのだろうが、てんしではない。
拙は妖怪だ。
天狗という、妖怪なのだ。
それでも、お主は……。」
まだ、自分の耳が信じられない。
確認のために訊ねると、梳菜の反応はやはり、