赤の疾風


背に美しい翼を生やし、自分の病を留めてくれ、…自分の命を救ってくれた。

梳菜にとって萬天は、思い描いた天使そのものだったのだ。


日本のみで育った者なら、誰しも嫌悪するだろう妖怪。
それを、少女はむしろ崇拝の気持ちで受け入れたのだった。


「……梳菜。
拙はてんしに見えるのだろうが、てんしではない。

拙は妖怪だ。
天狗という、妖怪なのだ。

それでも、お主は……。」



まだ、自分の耳が信じられない。


確認のために訊ねると、梳菜の反応はやはり、


< 156 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop