赤の疾風
弐
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萬天と梳菜が、松の下で身を寄せ合った頃、
仏塔の屋根の上にて、二匹の妖怪が思い出話に花を咲かせていた。
青い火の玉、林火と…、烏天狗の邪鏡だ。
【久しいの、お前が姿を見せるとは。】
昔馴染みとの再会をそれなりに喜んでいるらしい林火は、主君の姿にどこか誇らしげな邪鏡を横目で見た。
【まだまだ若造と思っておったが…、萬天様も恋をするのだなぁ。】
【何をしらばくれた事を…。
正直に申せ。
嘘なのだろう?
これまで散々萬天様に言っておった、“紅蓮山を三分する結界”とやらの話は。】