赤の疾風
「どうだ、梳菜?楽しいか?」
「へえ、とても!」
それは良かった、と梳菜の頭を撫でてやれば、彼女は嬉しそうな顔をしてから、眼前に広がる景色に手を翳して言った。
「わたし、今まで、この手の届く場所までが、浮き世の全てと思うておりゃんした……。
でも、違うんでしたねぇ……。
こん世はわたしが思うとるより…、ずうっとずうっと、広いんですねぇ……。」
「梳菜……。」
いつも身を守ることに忙しく、広い景色に目を向けることを許されなかった少女。
だが今、梳菜は長年の夢がようやく叶ったような、とても、幸せそうな表情をしている。