赤の疾風
「……萬天殿……わたしは…、」
呟きながら、梳菜はその頭の頭巾を音もなく取る。
「こんような成りで…童で…、萬天殿には、迷惑ばかりかけてしまうんではと……、そればかりが気掛かり……。ですが、」
―――わたしにそんようなお言葉をくだすったのは…萬天殿、ただお一人……。
―――だから………
「不束者ではありますが、なにとぞ、仲ようしてくんしゃいませ……。」
穏やかな声色。
萬天は彼女の表情にしばし見入り、
「まるで、嫁にでも来るような物言いだの。梳菜。」