赤の疾風
「好きでやっとるのです。
皆さんお忙しそうですし、少しでもお役に立てればと。」
だから雨の中、たった一人で重い鉈を振り、薪を切っているのですよ、と。
しかしながら、萬天の反応は、梳菜の予想とは大分違うものだった。
「薪を切って、寒き風に吹かれて、それで梳菜に何か利益はあるのか?」
「え?」
一瞬、よく言葉が頭に入ってこなかった。
なおも鉈をいじる萬天は、時折梳菜の表情を窺いながら、どこか不満そうな顔をしている。
まるで、理解できないことを大人に訊ねる子供のよう。
少なくとも、子供は「利益」などとそう口にしないとは思うが。