赤の疾風


「? 違うのか?
利益があるから、梳菜は宿の者の手伝いをしているのだろう?」


「…………。」


確かに、間違ってはいない。

身寄りのない梳菜が唯一生きていくためには、この宿屋に住み込み、その見返りとして宿屋の手伝いをしなければならない。

手伝いをすれば住む場所が確保されるというのは、一般で言うなら「利益」に入るのだろう。


だが、梳菜は一度も自分の行為を「利益のため」と思ったことは、


「そうではありませんえ。」


「……?」


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