赤の疾風
「わたしが働けば、住む場所が与えられる…。
それだけで、とても嬉しいことですが…、
わたし、好きで、お宿のお仕事をしとるんです。」
長いこと働いていれば当然、苦労も傷付くことも出てくる。
…客に頭巾を取られたことも、あの時が初めてではなかった…。
それでも、これまでめげずに続けてこれたのは、
「わたしん洗ったお布団で寝て、わたしん割った薪でお風呂に浸かって、わたしん運んだご飯を、美味しそうに食べてくださる……。
にこにこと、気持ちよくお礼をば言われると、胸があったかくなるんどす。」
礼を言われるたび、感謝されるたび、自分が役に立っているという安心感、
そして、喜びがあってこそ。
そこに利益など、何の意味があろうか?